第1章 ラブシーン 前編
「もう一回いい?」
うつむいたままでいる私にナオが声をかける。
普通聞くかなぁそういうの、と思いながら黙ってうなずく。
さっきよりちょっと強く唇が合わさる。
唇に舌が差し込まれた。
えっ、そういうんなら先に言ってもらわないと……、って普通言わないか。
舌は唇よりもずっとやわらかくて、そして熱かった。
だけど、これどうしよう。私も舌入れるべきかな。
でも、どうしよう……。
考えあぐねているうちに唇が離されたので、ちょっとホッとした。
「どう?」
ナオがうつむいたままの私に声をかける。
「どう……って?」
何を聞かれているのかよくわからなくて問い返すと、ナオも首をかしげる。
「こんな感じでいいかなぁ?」
「さぁ……」
そんなこと聞かれてもよくわかんないし……。
「もう一回いい?」
「えぇぇ……」
「ダメ?」
「ダメっていうか……」
雰囲気なさすぎ、なような。
「そっか」
ナオが何か納得したようにうなずく。
そしてなぜかうれしそうに続ける。
「じゃあ、ベッドシーンの練習しよ」