第3章 卒業(ラブシーン番外編)
「ありがと。ナオのほうこそこれからいろいろ大変だろうけど……、がんばってね」
「うん……」
ナオはちょっと寂しそうにうなずいた。
やっぱりいくら夢だったからって家族や友達と離れて暮らすのは寂しいよね。
私も……、やっぱり寂しい。
なんとなく地面に目を伏せると、ナオに声をかけられた。
「ユウちゃん」
「うん?」
顔を上げるとナオにじっとみつめられていてドキッとした。
私は背が低いほうじゃないけど、ナオのほうが15cmぐらい背が高い。
いつのまにこんなに背が高くなったのかな。
私はナオの顔をそっと見上げる。
あまり見たことないような真剣な顔。
あらためて見るとちょっと……かっこいいかも。いや、かなり?
ていうか、結構近い。目、閉じたらキスされちゃいそう。
え? 私、なに考えてるんだろう。
そんなんじゃ全然ないのに、でも……。
頭の中でそんなことをごちゃごちゃ考えていると、顔が熱くなってくるような気がした。
私、いま顔赤いかも。どうしよう、意識してると思われちゃう。
ナオ、なんか話してよ。
あ、私が話せばいいか。なに話そう。えっとぉ……。
すると突然、ナオが私の手を握った。
「へ?」
予想外の展開に、私は変な声が出てしまった……。
ナオはにっこりと微笑んで言った。
「帰ろっか。送ってくよ」
「……送ってく? 家、隣じゃん」
「うん。隣まで送ってく」
ナオは私の手を握ったまま歩き出した。
子どものころはいつもこんなふうに手をつないで歩いてたよね。
ナオが芸能界みたいなところで上手くやっていけるのかどうかは私にはわからないけど、ナオのことずっと応援してる……。
がんばってね、ナオ。
ナオの横顔をそっと見上げると、それに気づいてナオも私の顔を見てそっと微笑んだ。
なにか話そうかと思ったけど、別にいいやと思ってそのまま歩いた。
冷たい風の中にちょっとだけ春の匂いがした。