第1章 ラブシーン 前編
よくわからなくて私がただびっくりしていると、ナオも不思議そうに言った。
「え? なんで? ちがうの? だってユウちゃん、卒業式のとき、俺の第2ボタンもらってくれたじゃん」
「……それだけ?」
「それだけって……。それってそういうことじゃないの?」
「いや、だって、そんな、だからって……。ずっと、たまにメールしたり電話するだけだったし」
「それは、ユウちゃんが俺のために東京の大学に来てくれるって言うから、あんまり勉強の邪魔とかしちゃダメだと」
「え、えぇぇ……」
別に私はナオが東京にいるから東京の大学に行こうと思ったわけじゃないんだけど……、たぶん。
何を言えばいいのかわからなくなって私は少し沈黙した。
するとナオが口を開いた。
「あ、えっと……、なんかゴメン……。俺、勘違い? してたみたいで……」
私はしばらく何も言えず、寂しそうに目をふせるナオをじっと見つめた。
ナオがそんなふうに思ってたなんて。
私はナオのこと、そんなふうには全然……。
ていうか、ナオは東京行って、テレビとか出るようになって、私とは違う世界に行っちゃったような気がしてて。
でも、ホントはずっと……。
「わたしもナオのこと好き」
「え……?」