第1章 ラブシーン 前編
「なんかうらやましいなぁ。同い年なのに自分のやりたい仕事を思い切りやるんだって言い切れるなんて」
私がそう言うと、ナオは少し照れくさそうに笑った。
「ユウちゃんはどんな仕事したいの?」
「うーん。まだはっきりと決まってないというか、わかんないというか……」
そう答えながら私はちょっと自分が恥ずかしくなった。
「そっか。でもユウちゃんなら何にでもなれるよ。頭いいもん」
「それは……、ナオに比べたら、ね」
私がそう言って笑うと、ナオも楽しそうに笑った。
ナオは勉強が苦手で私がよく勉強を教えてあげたけど、ナオの成績はあんまり上がらなかったなぁ。
私、先生には向いてないかも。
「ナオは最近どう? 仕事どんな感じなの?」
「今はドラマの仕事がないからそんなに忙しくないけど……、あの、そういえばね」
ナオはそこまで言ってちょっと気まずそうにうつむいた。
「え、なになに?」
私がナオの顔をのぞくと、ナオはちょっと恥ずかしそうに続けた。
「今度映画の仕事があるんだけど……」
「へぇ、すごいじゃん。どんな映画?」
「え……、あ、普通の……、恋愛もの? それでね」
「うん」
「その映画のなかでラブシーンがあるんだ」
「ラブシーンってキスシーンとか?」
「うん……、キスシーンとか、もうちょっと」
「へぇ……」
私はなぜかちょっとだけ複雑な気持ちになった。
嫉妬ってわけでもないと思うんだけど……。