第9章 *オレにわがまま言って?【黄瀬涼太】*
「涼太?」
「っちごめん…!ホントにごめんっ……」
「どうしてそんなに謝るの…?」
「オレ呑みに行っちゃったし……それにその料理……」
「ああ……これ全部失敗したやつなの!だから気にしないで」
嘘だ……。
どれもこれもっちの得意料理ばかり。
なんでオレ……逆に気を使わせてるんだろう。
どうせなら怒ってほしい。
オレを引っ叩いてもいい。
っちが自分を抑えてるのが伝わってくるから、そうやって普通でいられる方が苦しい。
「どうして……怒んねぇんスか……」
「だって付き合いでしょ?仕方ないもん」
「待ってたんでしょ?!そのご馳走作ってオレを待っててくれたんでしょ?!ねぇ!」
「ちょ、涼太が声張り上げる事ないのに……」
「オレに気なんか使わなくていい!本当はどんな思いでいたんスか!」
オレには本当の事を言ってほしい。
そんな思いからつい大声になってしまった。
っちは黙ったまま。
けど……ちょっとだけ身体が震えてる。
「……本当は」
「寂しかった…?」
「うん……寂しかった……」
こう答えるのは分かっていたけど、キチンと言葉にされて言われると胸が痛い程に締め付けられた。
眉を寄せ、自分が居なかった時間を少しでも癒せるようにもう一度彼女を抱きしめたオレは……
何度も何度も謝って、そしてっちをこっちに向かせた。