第5章 *新婚旅行【赤司征十郎】*
「せ、せ、征十郎さん……」
「なんだい?」
「ベッドに天蓋がついてる…!」
「ああ、こういうの好きなんだろう?」
「一度でいいから寝てみたかったの…!」
「喜んでもらえて何よりだ」
「ありがとう征十郎さんっ!」
「おっと……」
コテージに案内されて直ぐ。
は真っ先に天蓋に気が付いた。
船の上では萎縮してしまっていたのに、もうオレに抱き付いてくるとは。
ここにして良かった。
先ずオレがこの施設に決めたのは、資料に載っていた天蓋に赤丸が付けられていたから。
それを無視するわけがない。
それに流石のオレも天蓋は初めてだ。
良い雰囲気を醸し出している。
「離れないね」
「あっ、ごめんね…!嬉しくてつい……」
「いや、まだこのままでいい」
「どうし、んっ…!」
「やっと二人きりになれたんだ、キスくらいいいだろう…?」
「って……もうした……」
「まだだ。これくらいじゃ足りない……」
「んっ、ンン…っ」
荷物を広げるでも部屋を見て回るでもなく、オレはと今日初めてのキスを交わした。
食事すらまだなのに、つい甘くしてしまうのはオレの欲のせい。
といるとどうしようもなく求めたくなる。
だが……それはまだ解放してはいけない。
「すまない、力を奪ってしまったね。横になっているといい」
「や……色々見て回りたい……」
「立っていられるのか?」
「大丈夫…!全然平気っ…………あ」
この時のお腹の虫が鳴いた。
それもかなり大きく。
オレの耳にもしっかりと届いた。
「今のは違うの!」と、意味のない言い訳をする姿が愛らしい。
「フッ、食事にしよう。予約してある」
「笑っちゃヤダ……」
「ああすまない、可愛かったからつい……ね」
「むぅ……」
「さあ行こうか」
「う、うん……」