第4章 *初めては恥じゃない【伊月俊】*
「先輩、もの凄い数のノートですね。全部ネタですか?」
「ああ。見てみる?」
「あ、は、はい」
「今心で〝えっ?〟って思っただろ」
「へっ?!思ってませんよ!ちっとも!」
「別にいいよ、慣れてるから」
「違うのにぃ……うぅ……」
まあ驚いてるだけかもしれない。
何せ……ズラッと並んでるから。ズラッと。
その中の一冊を取り出して、「これはこう掛けてあるんだよ!」とか「良い出来だと思わないか?!」とか……
ダジャレの良さを知ってほしくて熱弁するオレ。
ちょくちょく笑ってくれるから楽しい。
「先輩っ、んー!」
「え、今か?」
「はい!んー」
楽しいんだけど……合間にこうやってキスをせがまれてしまう。
平静を装ってチュッてしてあげても、オレの気持ちは先走るばかりでしんどい。
雰囲気とかどう運んだらいいのか検討もつかないし。
「ふふん!」
「ホント嬉しそうだな」
「だって俊先輩大好きですもん!」
「っ……そう言われるとさ、その……」
「あー!先輩ってば赤い!」
「ち、違うって!これは…!」
「ふふっ、じゃあもっとキス……しませんか?」
けど流れを作ったのはオレじゃなくてだった。
お願いを聞いて、さっきみたいに重ねるだけのキスをしたオレ。
でもは満足してくれなくて……
「待って下さい……直ぐにチュウを中断しないで……」
って切ない声で言ってきたんだ。
まあ……甘いには程遠いけど、2人してクスクス笑えるくらい緊張感がなくなったから良かった。
「それ……いただき!」
「あ、分かりました…?いただいちゃって下さい」
「ありがとう!早速ネタ帳に書、」
「ダメですよ!後にして下さい!」
「ああごめん!オレ直ぐメモする癖があるから」
「知ってます」
「ははっ、そうだよな。じゃあもっとしてあげるよ、キス」
「ふふっ、はい」