第4章 *初めては恥じゃない【伊月俊】*
「ちゃんちってここだったんだな」
「はい。ありがとうございました」
「ちょっと遅くなっちゃったからな、送るくらいどうって事ないよ」
腕は背中に回せなかったけど、ちゃんが泣き止むまでオレはずっと側にいた。
そして今、泣き腫らした目を抱えた彼女を送りに来たところ。
無理して笑顔を作るちゃんを見て胸がズキッと痛む。
なんだか悔しくて……オレは拳を作った。
自分なら泣かせたりしないのに……。
「あの……明日にはちゃんと立ち直ってますから!だから先輩、いつも通りに接して下さいね。じゃあ……おやすみなさい」
「待って!」
「え…?」
「……オレじゃダメかな」
「えっ、先輩…?」
「……ああごめん…!ごめん、ホントに……今のはその……っ、ホントごめん!また明日な!」
「あのっ、伊月先輩!」
オレは何てバカな事を言ってしまったんだろうか。
「オレじゃダメかな」なんて……こんな時に言うものじゃなかった。
自分のかっこ悪さに恥ずかしくなってさっさとその場から逃げ出したから、ちゃんに余計な負担を掛けさせたままだ。
また明日とか……どんな顔して会えばいいか分からない。
「どうするオレ……すんごい中途半端……」
人生初の告白がいい加減になってしまった事、
ちゃんを追い詰めてしまった事、
伝えるつもりはなかったのに吐き出してしまった事、
もう自分の行動全てが頭を抱えるものとなってしまった。
「あーもう…!どうしたらいい…!」
どうするどうするってオウムみたいに繰り返しながら足早に歩くオレ。
そんなオレを……ちゃんはずっと見送ってくれていた。
「ありがとうございます、先輩……」
こっちまで届かない声でこう言いながら……。