第4章 *初めては恥じゃない【伊月俊】*
「別れたいし別れたくありません……」
ちゃんが俯いて言ったこの言葉の意味がよく分からなくて、オレは更に「どういう事?」って聞き返した。
そうしたら彼女は……
「結構長く付き合ってきたんで……情が移ってるんだと思います」
と答えてくれた。
女の子と付き合った事がないオレにはその気持ちにいまいちピンとこなかったけど……
こちらから言わせて貰えば、相手の心に違う子が入り込んでしまったのなら別れた方がいいと思う。
例え好きでも……それじゃ付き合う事が辛くなるんじゃないかと。
自分だけを見てくれないなんて……苦しいに決まってる。
「すみません、呼び出しといてこんな話……」
「オレの事はいいよ。それよりショックだっただろ?」
「はい……。もう泣けますよ、こんなの……」
「泣きたいなら泣けばいい。溜めるよりずっといいよ。なっ?」
「それは帰ってからにします……。今泣いちゃもっと迷惑をかけてしまうので……」
「オレの事はいいってさっき言っただろ?まだここに居るから……泣いていいよ」
「っ……」
孤独に涙を流させたくなかったから、我慢強いちゃんの頭にそっと手を乗せたオレ。
そのおかげか声を殺してる音が聞こえ始めて……そして月明かりで光る雫がポタポタと落ちていくのを目で捉えた。
彼女が今泣いてるなんて、その彼氏は知らないだろう。
こんなに溢れさせてるのに……。
せめて捜していてほしいと思った。ちゃんの為にも。
オレはただ側にいる事しか出来ない。
頭を引き寄せて、自分の胸で泣かせてあげたいけど……してもいいのか分からなくて躊躇う。
けどオレは行動に移してしまうんだ。
ちゃんの事が大切だから……。