第4章 *初めては恥じゃない【伊月俊】*
でも本当に楽しいと思うんだ。
ずっと笑っていられそうだし。
ちゃんは待ち合わせに慌てながら来て、
「すみません!」ってペコペコして、
オレが「気にしなくていいよ」って言ったら……
「伊月先輩とデートだから服選びに手間取っちゃって……」とか言ってくれちゃったりして。
ああ……一回してみたいな……。って、帰宅後自分の部屋で虚しく妄想するオレであった。
「ん…?メールか。コガか?」
【伊月先輩……相談があるんですけど、今外出れたりしますか…?】
「えっ、ちゃんからだ……何だ?相談って」
ハァ……と吐いたため息と共に鳴り響いた着信音。
確認してみればたった今思い浮かべていた人からで、いつも以上に胸の鼓動が高鳴る。
けど何だか深刻さを感じて……あっという間に平常心に戻った。
「もしもしちゃん?大丈夫だよ、今どこ?」
「自分んちの前です……」
「あーそっか……じゃあオレ学校まで行くからさ、そこで会おう」
「はい……」
「暗いから気を付けるんだぞ?」
「はい、わかりました……」
「じゃあまた後でな」
声を聞いてみれば更に確信する良くない感じ。
嫌な胸騒ぎがして、オレは財布に手を伸ばして急いで家を出た。
待たせたくないからって小走りに夜の風を切る。
途中何を言われるだろうって色々考えを巡らせたけど全く検討がつかなかった。
いつも元気なちゃんが暗くなるくらいだ、かなり悪い事があったに違いない……。