第12章 *思い出の海【花宮 真】*
『ちょっと…!真くん…!』
『うるせぇな……さっさと来い』
『でも……腕が痛いよ…っ』
あの時強く掴んだの腕の感触……嫌というくらい掌に染み付いてる。
あれ以上力を込めたら折れそうな程細かったな。
でも……とても温かかった。
『寝ろ』
『きゃ!』
『お前……逃げ道でも作る気かよ』
『そんな……何言ってるの、私は…!』
『真くんしかいねぇって…?ふはっ!笑わせんなよ。あんだけ笑顔振り撒きやがって』
『あれは……』
『イラつくんだよ……お前が他の男に笑いかけてんのを見んのは……』
『真くん……』
『オレには生憎独占力があんだよ。お前は絶対手放さねぇ』
『ひゃ…!まこっ、んっ…!』
だからって全てを支配する権利がオレにあっただろうか。
誰とも話すな。
誰にも近寄るな。
オレだけを見ろ。
オレだけを好きでいろ。
そんなの……どっかのイカれた野郎の考えと一緒で気色悪い。
でも当時のオレはマトモな考えが出来なかった。
……気に入ってたんだ、の笑った顔。
苦しみにもがいて歯ぎしりするような表情を見るのが好きだった筈なのに……
のせいで全て狂わされた。
『チッ…!なんだよこのめんどくせぇ服は』
『やめて……待って真くんっ……』
『ハァ?一々待ってなんかられねぇな』
『やぁっ……』
初めは『何癒されてんだよオレは』って否定して舌打ちをする日々だった。
らしくない。
こんな事を思うオレはキモい。
モヤモヤが全く取れなくて、こっちが歯ぎしりするハメになって。
けどと会って、オレに優しい笑顔を向けてくれると……
不思議と晴れたんだ、気分が。