第11章 *温泉旅行で【氷室辰也】*
「……って、まだ照れてるのか?」
「だってずるいですよ!あんな場所であんな甘い声出すなんて…!」
「実はがそうなるとこ、見たかったんだ」
「……もー!」
あれから宿に戻ってご飯を食べても、は未だに頬を染めたまま。
照れながら怒る彼女もまた可愛いなと思うオレは今、浴衣姿で頬杖しながら布団にうつ伏せになってる。
そんな体勢でを見てるだけなのに……目が合うと益々赤らめてしまうんだ。
「どうした…?さっきより赤いよ」
「なんでもありません…!」
「こっちおいで。もっとよく見せてほしい」
「む、無理です…っ」
「」
オレが優しく呼んであげると、はちょっとずつだけど近付いてきてくれる。
隣にもう一組布団があるけど別々に寝る気はないから、自分の隣に横になってもらった。
浴衣がまた……色気を誘う。
「また赤くなったな」
「なってませんっ……」
「、オレを見て……」
触れた頬はとても熱い。
温泉に入ったのはもう随分と前の事だから、そのせいではないのが分かる。
はいつになっても緊張してしまうらしい。
可愛くて可愛くて……気がおかしくなりそうだ。
「目を開けて…?」
「直ぐそこに気配が…っ」
「ああ……ならちょっと離れるよ。これでいいかな」
「は、はいっ……んっ…!」