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Re:思い出

第6章 過去が今に変わる


「タチバナ先輩は2年の時からあそこでお昼食べてたんですね」
クロサワは私の顔を見るなりそんなことを言った。
私は今朝座った席、クロサワの隣に座って会話を続ける。

「何? 知ってたの?」
「まあ、知ってたって言うか其処からの視線たまに感じてましたし」
「…悪かったわね」
「全然問題ないですよ」
「あ、お弁当。美味しかった。有難う」
「いえいえ。それが俺の仕事ですから」

オーナーは少し離れたとこでガラスのグラスにアイスティを注いでいた。

「クロサワくん。火ィ頂戴」
煙草を咥えてクロサワから当たり前のように煙草を重ねて火をもらう。

「あー。やらしーんだアズサちゃん。ついでにクロサワ君も」
オーナーは私達に、グラスに入ったアイスティを差し出しながら笑ってそう言った。

いつも私を馬鹿にしてるみたいな、そんな感じの言い草。
彼は今まで私がバーで誰かと居ても極力接触してこなかったのにクロサワには酷く絡む。
ただ単にとても気に入ってるのか、何なのかは知らないが珍しい。


オーナーはその少しふざけた口調のまま話を続けた。
「で、やった? 小さくなる前は僕の時間配分ミスで邪魔しちゃったんだっけ」
仮にも今は教育者だというのにそれらしからぬオーナーの言葉。
「まだしてない」
クロサワは表情も変えずそうと答えた。
まだって何? そう思ったけれどその答えはすぐに彼が続けた。

「タチバナ先輩の真似ー」
余裕のある笑顔を見せたクロサワはなんだか楽しそうだった。

確かにあのとき私は キスを「まだ」してないと答えた。
そして睡魔に襲われしてないから「まだ」してないのだけども。

そしてオーナーの言葉から察するにあの睡魔は時間を移動するための何かだったのだろう。

「よかった。言い忘れてたけど多分今の身体だとアズサちゃんバージンだから優しくしてあげてね」
オーナーはクロサワの髪をぐしゃぐしゃと撫でた。
じゃー俺も童貞っすわーとオーナーに要らない情報を言ってのけたクロサワは2本目の煙草を咥え私の頭を乱暴に両手で固定して火を奪った。
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