第6章 過去が今に変わる
彼女の質問は以下の通りだった。
・引っ越し理由とその場所
・今朝の後輩の詳細と関係
・先程の隣の彼とのやりとり
まず、私は父親の転勤とセキュリティ面から実家から学校の近くにあるマンションに移ることを家族から持ち出され従ったことを伝えた。
ユーカも遊びに来たいと言ったので落ち着いたらと話した。
高校生と言うのはどうしてこんなに独り暮らしに興味を持つのだろう。実際は2人暮らしなわけだがユーカにも内緒にすることにした。
従って2番目の質問も誤魔化す必要が出てきた。
クロサワと私の関係。
小学校から一緒のユーカに過去の知り合いと偽れない。親戚とも言えば後々収拾がつかなくなったら困る。
私は無理があること覚悟で登校途中でぶつかっちゃって、彼のことは詳しく知らない。
名前とクラスは謝ったときに一応伝えた。
こんな嘘みたいな話した。嘘みたいってか嘘な訳ですが。
ユーカは なーんだ と納得してた。
ユーカは少女漫画好きで夢見がちな子だからこんな展開信じてくれたのかな。
偶然同じ鞄って運命感じると夢膨らますユーカに私は心のなかで謝罪した。
鞄が一緒なのはヤツが勝手に選んだからです、なんて絶対に言えないことだ。
そして最後の質問。
ぼーっとしてたから分からなくてノート借りたと正直に答えた。
「アズサの訳にしては綺麗すぎたから吃驚したけどそれなら納得」
と私を貶しつつ笑った。
そうだ、ユーカは優しい顔してるしみんなに優しいのに私に厳しい。
ユーカはそれを愛と呼ぶ。
今思えばただの内弁慶で私が内に含まれてるだけだと思う。
「大体アズサの訳はいつも直訳過ぎなのよ」
とアドバイスまでくれる始末。
彼女の影響で台詞覚え飽きるほど見た洋画を英語字幕で見ることになったのを思い出した。
私と名前紳士を繋いだのはユーカなのかもしれない。まあどうでもいい話だが。