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Re:思い出

第1章 ここから始まった


ドアが開くと背の高い真面目そうな男がひとり。

細身のスーツが様になっていた。年齢は私と同じか少し上くらいに見えた。
黒い髪を上に上げ、きりっとした眉がとても誠実そうに見えたが、少し色っぽい。
結構綺麗目な顔。はじめて来たのだろうか、周りを見渡している。

「オーナー!客来た!」
私の声にオーナーがライムを持って奥から顔を出す。

「ターゲット候補、登場~」
私にだけ聞こえるような小声でそう言ってにやっと笑うオーナーにため息が出た。

何故、候補なのかというと、彼が喫煙者とは限らない。
この作戦において喫煙者であることが第一条件だからだ。

カウンターの私とは対象の端に座ると彼はオーナーになにか頼んでいた。
彼の手がスーツの内ポケットに入った。私は彼の顔をもう一度見て煙草であってくれ、と思う。
誰だって整った顔が好きだ。彼の後に彼以上の人間がくるとは限らない。

期待とは裏腹に其処から出てきたのはスマートフォン。

「すみません、すぐ戻りますから注文したもの此処において置いてください」
彼はオーナーにそういい残し外に出て行った。

オーナーは言われたとおりのものを彼の居たであろう場所においてこちらに戻ってきた。
こういうとき、普段だったら戻ってきてから用意するのに余程私の話が気になったのだろう。

私は既にボトルの1/3をあけた所だった。

「アズサちゃん、これ今日中に飲む気?」
「空けた時が一番美味しい。多分」

呆れ気味のオーナーの声に頷く。
私は、語る気分なのだ。この話をするには恥ずかしいので飲むしかない、そう思って飲んだ。


「高校生のとき、私は多分。恋をしていた!」
ばっと立ち上がった私にオーナーは少し吃驚していた。

「そう、恋をしていたのだ! 多分…」
分かったから、座ってというオーナーの言葉を素直に飲み込んで座ったのは多分その時に酔いは回ってきてたのだろう。
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