第1章 ここから始まった
「で、そんな理由からコーコーセー狙いたいなーなんて思っちゃったの?」
オーナーが二本目の煙草を取ったところで私はすかさずポケットにそれを隠した。
煙草に火をつけさせないために グラス半分に入ったお酒をぐっと飲む。
「今度は別の頂戴。出来るだけ濃いの」
舌打ちしたオーナーがシーグラムのジンと氷の入ったグラスを持って戻ってきた。
「これ、全部あげるからその煙草出して。
こんな安モンがすきとか、面白いよね。一箱と物々交換」
私はポケットから先ほどの煙草、そして反対のポケットから予備の煙草。合計二箱を差し出した。
予備のあけてない煙草をカウンターのあちら側に行くように指ではじいて、追加注文。
「ライムあると嬉しいんだけど。さっきの二本分はそれで」
めんどくさそうな顔をしたオーナーが奥に消えていて、私がボトルの蓋を開けた時、ドアの開く音がした。
アズサちゃんのターゲット、次の客ね
オーナーの声が頭で響いた。