• テキストサイズ

Re:思い出

第5章 したかったこと  side M


駅までの帰り道、タチバナさんにありがとう、と言われた。
まあ、一個の袋に入れてもらったんだから俺が荷物を持つのは当たり前でしょ。
横に並んでいたはずの彼女はぱっと走り出して俺の前を歩く。

そんな後姿もやっぱり真っ直ぐ歩けないみたいでふらふらしてた。




駅からマンションまでの中間地点にスーパーマーケット。
タチバナさんはこのスーパーはお酒の数が豊富だからよく来ているらしい。
俺は買い物籠が似合わないタチバナさんの後ろを歩く。

「クロサワ君。何いるの?」
空の買い物籠を揺らしながらタチバナさんはこちらを振り向いてそう訊ねる。

「えっと、とりあえず適当に野菜を…」
タチバナさんは選ばずに手の取りやすい野菜たちをぽんぽんカゴに入れていった。

本当に料理しないんだな、この人は。
気づいた時点でタチバナさんを止め俺が指定したものをカゴに入れる方式に変更した。

魚を見てたらタチバナさんは急に消えた。
仕方なくパックを空いた方の手に持ち肉を見てると
彼女はシリアルとヨーグルト、牛乳をカゴに入れて戻ってきた。


「牛乳は奥から賞味期限の遠いものを選んだ」

どや顔である。
流石タチバナ先輩!と一応誉めたら満足そうにしてた。

何故それを野菜でもやらないのか謎だがタチバナさんだからと思えばなんだって納得出来る。

今日は出来合いのコロッケでいいと親切振ったタチバナさん。
きっとカニクリームコロッケに惹かれただけだと思う。

荷物が多くなったので米は一番小さなサイズのものを買い
次回また荷物少ないときに買おうと決めた。



調味料から何から何までないので当然かもしれないが、思ったより多く買ってしまった。
タチバナさんにワインを諦めてもらって正解だった。
スーパーの袋で両手が塞がりタチバナさんに鞄の入った袋を持たせる始末。

申し訳ない。彼女は少し重そうに鞄を持っていた。
そんなはずなかった気がするが疲れてきてるのだろうか。

もう少しで家だから頑張れ。

自分で言っておいてあれだが今の状態で背負うのは無理だ。
タチバナさんが今朝の俺の言葉を忘れてくれてて本当に助かった。
/ 104ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp