第5章 したかったこと side M
丁度昼過ぎだったのでカフェの向かいにあった飲食店に入る。料理メニューは別にあったドリンクメニューがあった。
「流石にまずいだろ」
ドリンクメニューでワインを見ている俺に対してタチバナさんが笑ってた。
そっか、そうだった。いくら制服ではないとは言えその通りである。
適当にランチのセットを頼んだ。勿論ワインは頼まなかった。
タチバナさんは鷹の爪を器用に避けながらパスタを口に運ぶ。
辛いの、苦手なんだ。タチバナさんの目の前のお皿には綺麗に鷹の爪の山が出来ていた。
他のもの頼めばいいのに。
食事中はあまり話さないで食後の珈琲を飲みながらこれからどうするか話し合った。
タチバナさんはまた煙草を吸っている。
「あと、何が必要なんでしたっけ?」
「えっと、鞄でしょ? それと、服は買ったんだよね? 靴も?」
「靴も買いました。あとは、ベッド欲しいです」
俺に宛がわれた部屋には多分シングルベッドなら置けると思う。
それかソファベッドでもいいし、デスク付のロフトベッドなんか、メッチャ学生っぽいなあとかそんなこと伝えた。
『まあ、そんなのどうでもいいからさっさと買いに行くよ』
とでも言われると思ったのに帰ってきた返事は想像もしてなかったことだった。
「私、そんな寝相悪かった?」
そういう事じゃないんだけど。
彼女の言い分として、布団というものは埃が発生しやすいので増やすと掃除が大変になる。
そして2年後の処分が面倒だということ。
確かに最近、いや、あちらでの何年後かの戻ったときのあちらでの最近は大きなものの処分が結構面倒である。
だが、俺にだって言いたい事はいっぱいある。
昨日の話から察するに彼女は家に男を招くこともあるだろうし、あのベッドが使われることもあるかもしれない。
そこで毎晩寝ろと、そう仰るんですか。
もうこの際、過去誰が寝てたって我慢しよう、だがこれからの話である。
これは俺の管轄内だ。
まあ、俺、居候ですけど、そう付け足した。が、聞き入れられなかった。
とりあえず、売り場に行かせれば気が変わるかもしれないと思い、枕が欲しいと言ったら「 枕だけ ならいい」って、念を押された。作戦失敗である。
タチバナさんが抱き枕になってくれるなら枕も要らないがそれをいうとややこしい事になるので黙っておいた。