第5章 したかったこと side M
タチバナさんが待っているだろうカフェに向かうと彼女は一番奥の席で煙草を吹かしていた。
まあ、子供っぽいし本人が成人をしているといっても疑いをかけられそうだが、ファッションや持ち物からみればそう見えなくもない曖昧な感じ。
そしてよくよく見ると、彼女の前には少し長い髪を脱色させてやんちゃな感じの少年がひとり。タチバナさんは彼をあしらいながらも少し困った表情。
丁度、彼女の視界は俺は入らない。こちらに背を向ける形で座っている。
少しずつ、タチバナさんに近づいていくと少年は俺が彼女の連れと気付いたのだろう。適当に話を誤魔化して足早に立ち去って言った。
「タチバナ先輩。待たせて御免なさい」
「いや、そんな待ってない」
彼女は俺の声に気付いて振り向いてニコリと笑った。どうやらさっきの少年のことはなかったことになってるらしい。
ワザとその事を言ってやると子供には興味ないなんて言った。
自分はそんな子供になってしまったくせに。その上酔っ払っていたとはいえこの子供のときの俺に手を出したいといっていたのは何処のどいつだ。
そんなこと言えるはずもなく表面上話が終わりそうなことを言ったような気がする。