第5章 したかったこと side M
買い物先には電車で向かった。
郊外のショッピングモールに電車とか。もうこれ、完全に高校生。
電車の中でマンションの前にとめてあったタチバナさんの車の話で盛り上がった。
名前をつけて可愛がってるらしいその車は俺達の高校生時代以前に製造されたもの。かわいらしい彼女に似合う車だった。
目的地に到着するとまず、ATMでお金を下ろした。彼女は持っててとそのお金を俺に手渡す。
「こういう買い物って男が出したほうがいいんでしょ?」
「いや、気にしなくていいですよ」
「私が気にするの。はい、早く」
一応は俺を立ててくれてるらしいタチバナさん。それを受け取りながら会話を進める。
「えっと、最初に服買って、そのまま着替えたいです」
「うん」
「で、そのあとキッチン用品とかも買わなきゃいけないですよね」
「だね」
「あとは、鞄でしたっけ?」
「...そうだね」
少し様子が変だと思ったら、彼女は少し馴染んでない足元に目を落としていた。
多分、俺が選んだ靴の所為。多分じゃなくて絶対だ。ちょっと我侭を言い過ぎたのかもしれない。
彼女に少し近くにあったカフェを指差し其処で待っているように伝えた。安心したような笑顔。
其処まで辛いなら最初から断ればいいのに。でも、彼女にはこの靴を履いてもらいたかった。
「買い物、ひとりで大丈夫なの?」
「子供じゃあるまいし。大丈夫ですよ」
「高校一年生の餓鬼が何言ってるのよ」
「高校二年生の餓鬼に言われたくないですね」
「確かに。じゃあ、お言葉に甘えて。珈琲でも飲んで待ってることにする」
「出来るだけ早く済ませますから」
「気にしなくていい。いってらっしゃい」
「はい」