第4章 したかったこと
順々に調理機具が空だったシンク下や吊棚が埋まっていく。
最後に取り出されたのはコーヒーを淹れる道具たちだった。
「朝飲まないと目が覚めなくて」
そう言い訳してた。
邪魔なら自分の部屋に置くと言ったが対面になったキッチンカウンターに置いて貰うことにした。
毎日使うなら出したままの方がいい。珈琲豆も買っていた様でそれも並べられた。
クロサワが来て一気に生活感が増したこの家も案外悪くないと思った。まだ2日しか経ってないのに。
晩御飯。
今日は色々時間がないだろうという私の優しい心遣いによりおかずは出来合いのコロッケ。
クロサワは慣れた手つきで野菜スープとサラダを作り、買ったばかりの鍋でご飯を炊いていた。
炊飯器を買わなかったのが疑問だったがそう言うことか。
ビールを飲みながら晩御飯を食べた。
「そういえば、お昼どうします?」
「学食もないし混んでる購買にも行きたくないな。食べないという選択肢もありかな?」
「一応作ろうと思って弁当箱買いましたけど」
確認するとまたあの生意気そうな女の子のイラストの書かれた赤い弁当箱。お前、本当に好きなんだな。
私は先程の油性ペンを探すため立ち上がると、察したのだろう。彼は自らこの赤い弁当箱を使うと言い出した。
「俺のがこっちでいいから名前書くの勘弁して下さい」
私のお弁当箱は緑の旅人が描かれたものになった。
クロサワには少し小さく思えたので確認したら選びたいだろうから同じシリーズの違うデザインのものを買ったこと。
これにおにぎりを一個足せば昼食としては十分だということを教えてくれた。
クロサワいいやつ。
「クロサワくん、お弁当、宜しくお願い致します」
「宜しくお願いされました」
クロサワは笑った。
彼は食べ終えるのが私よりも早かったのでビールを飲みながらこっちを見ている。
私の目の前にはまだ沢山のご飯があるので慌ててそれを食べようとしていると急がなくていいと言われた。
じゃあ、なんでこっち見るかな?
「そう言えば先輩。アレルギーとか嫌いな食べ物ありますか?」
「特にない」
「じゃあ辛いもの以外は平気ですね 」
確かに私は辛いものが苦手だ。
教えた覚えはないのに何故知ってるのだろうか。