第4章 したかったこと
彼の腕時計を見ると、ちょうどお昼を過ぎたくらいだったので遅めのランチをすることにした。
何が食べたいか聞かれたが特に食べたいものがないのでクロサワが決めた店に入った。
お昼を食べながら話を聞くと彼は私が待ってるほんの30分程度で服は勿論調理器具と食器も買ったらしい。仕事が早い。私と一緒だと時間が掛かりすぎることを見越していたようだった。
「あとはベッド欲しいんですけどいいですか?」
「必要ない」
私は彼の問いに即答した。布団はホコリ発生装置だから出来るだけ置きたくない。
昨日みたいに家にあるセミダブルで一緒だと狭いか訊ねると他の人と寝た所で寝たくないとか居候の癖に生意気なことを答えた。どうにか粘ってできる限り家でそういうことしないことを条件に買わずに済んだ。枕だけは自分のがほしいと可愛いこと言ってたので勿論それは承諾した。
それ以外に欲しいものは通学用の鞄とここ数日分の食材。これなら暗くなる前に帰れそうだ。食材は自宅付近のスーパーにいくことにして残る目標を通学用の鞄だけに絞りランチが終了した。
お店を出たところでクロサワが立ち止まる。
「やっぱこのくらいがいいサイズですね」
ガラスを指差す。そこには私とクロサワが写っていた。身長差がバランスよく見えた。
「このくらいだと俺とピッタリじゃないですか?」
頭をぽんぽんと叩かれた。クロサワがこの靴を選んだのはこのためだったのだろうか。
「俺は多分この2年間でもっともっと背が伸びますけど先輩は少しだけしか伸びないだろうから高いヒール履けるようになって下さいね」
何だか面倒なことになったな。ヒールは苦手なのだけれどクロサワが笑ってたから笑い返した。