第4章 したかったこと
車が使えないとは不便なものである。
私の車は旧車であるため取り上げられてはいないようで駐車場に置きっぱなしになっていた。今度オーナーにあったらバッテリー上がってしまわないように定期的に走らせるように頼んでおこう。
家から歩いて5分ほどに駅がある。電車に揺られて数十分。郊外の複合型ショッピングモール。
正直な話こういう場所は少し苦手だ。
買い物をするときも本来なら1種類のものに1日かけたいタイプ。
服を買いたいときに他のものまで買いたくない。欲しいものはその専門店で買うし、買い物したものを持って他の店に入るなんて言語道断である。
だが仕方ない。今回は急速に必要なものが多すぎる。
とりあえずクロサワに服を買いに行くと言うので私はカフェで珈琲を飲んで待つことにした。
この時代はあちらより規制が緩いようで分煙なんてないようだった。テーブルには当たり前のように灰皿。
珈琲が半分になったところで人が近づいてきた。クロサワかと思ってたがどうやら違ったみたいだ。
高校生か大学生くらいの男の子。今暇かとか何処か行こうとか言われたが連れを待っていることを伝える。それがこの子には伝わらないらしいと気付いたところにクロサワが来た。
今さっき買った服なのだろうか家を出たときとは違う服装。今の年齢が年齢だから子供っぽさがあるけれども童顔の大学生とならば通じそうな雰囲気。高1ながら背は高い方だし顔自体もある程度整ってるので実年齢よりは上に見えるだろう、贔屓目に見ればの話だが。
クロサワが私の向かいに座ると私のコーヒーブレイクを邪魔した男は足早に去っていった。
「買い物、早すぎじゃない?」
「先輩待ってると思って急ぎましたから。それなのに変な餓鬼に引っ掛かってるから吃驚しました」
「本来の私たちからすれば只のお子様、でしょ?」
「そんなお子様をターゲットにしてる先輩だから少し心配ですけど?」
彼の手に荷物はなかった。買ったものは家に送ってもらうように頼んだらしい。手際のよさに感心した。
クロサワは中身は大人の男なんですよ、なんて冗談言って笑ってた。