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Re:思い出

第3章 思わぬ出来事 side M


丁度10時になった頃。
俺の鞄に入っていた出張用にと鞄に詰められていた服は洗濯され、バルコニーで太陽の光を浴びパタパタ揺れている。

それと一緒にタチバナアズサの服も干されているのがなんだか不思議な光景だった。
きっとこの2年間で当たり前になっていくんだろう。

煙草を吸いながらタチバナさんと大学は何処へ行ったのだとか今はどこに住んで何をしてるのだとか、そんな話をした。
2ヶ月に1回程度仕事を早く上がって映画のレイトショウを見に行っているという共通の話題で盛り上がったところで彼女が言い出したのはとんでもないことだった。

誰でもいい、いや、誰でもいい訳ではないだろう。彼女は誰でもいいとは言ったが俺の解釈によると違う。
何処か気に入った異性が彼女と2人きりになったとき、肌を重ねたとき、そしてその後。その態度の変化を見るのがとても楽しく興味深いという話だった。

あの優男とその結果の話をするのが日常で、楽しみのひとつ。
それを彼女は「研究発表会」と言ってのけた。
この2人、虫も殺さぬ顔をして結構エグい。

きっと俺もこんな状況になってなければ来週にでも『昔話を聞いてそれを再現しようという趣味の悪い男』として発表されていただろう。
きっとではない、絶対だ。恐ろしい。

でももっと恐ろしいのはそれを聞いてしまいながらもやっぱりタチバナアズサというひとりの女性に惹かれている自分がいることだった。
寧ろ一層惹かれていた。

彼女にどんなアクションを起こせばこの行為が止まるのだろう。
そしてどんなアクションを起こせばこの行為に拍車がかかるのだろう。

もし辞めさせるにしてもつい先日あったばかりといっても過言ではない俺が止めたことでこれを辞めるはずがないことは誰もが分かること。

ならば状況全部把握させて頂こうではありませんか。その方がまだ安心だ。

居候として。
2年間の運命共同体として。
そして何より彼女を想うひとりの男として。

自分の中でそんな結論が出たので出来る協力はするということになった。

俺も共犯になるのだろうか。
それとも気付かぬ間に研究材料にされてしまうのだろうか。
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