第3章 思わぬ出来事 side M
そんな中、タチバナさんが一番心配したことはとんでもないこと。
そう、煙草である。
あれだけ吸ってるチェーンスモーカー。
タチバナさんも昨晩よりは吸ってないにしても今日も結構な量を消費していた。
そのとんでもない心配事に優男のオーナーさんは自身が教員として同じ高校に入ること、化学準備室を自身の拠点にすることを教えてくれた。
そして灰皿と各々の煙草のストックを其処に常備してくれるらしい。
俺も昼間中ずっと禁煙は少しきつい。
この感じだと多分昼に1本は吸いたい。
これだけ彼女を馬鹿にしながらもそれはありがたいことだった。
タチバナさんの場合休み時間毎に行っても足りなさそうな気がするがその辺はどうするのだろう。
少し不安になったが自分自身が他人のそんなことを心配する余裕があることが可笑しかった。
まあ楽しく過ごせばいっか、どうせ戻してもらえるんだし。
俺はこの状況への不安よりこれからの希望を考える事に決めた。
オーナーさんが帰ったところでタチバナさんは俺に謝罪した。
結構今後が楽しみになってきたのでどうでもよかった。
タチバナさんは俺のことを クロサワコーキ と他人行儀に呼んだ。
2年間の運命共同体にしては距離感があるその呼び方に少し不満を漏らし厭味ったらしく昨日と同じように タチバナさんと出来るだけ優しい声で呼んでやった。
その上で呼び捨てすることを求めると何か考えがあるのか悪戯に笑い距離感のある呼び方を強要するタチバナアズサ。
「先輩」
そう呼ぶととても満足そうな笑みを浮かべた。
卒業アルバムに写っていた、あの彼女の顔そのものだった。
何故か分からないけれど多分俺は彼女に惹かれている。