第3章 思わぬ出来事 side M
そこでは俺が戻ったことに気付かないほどの熱い会話。
目の前のウイスキーを飲みながらぼんやりと聞こえる会話に耳を傾けざるを得なかった。
「アズサちゃん」と呼ばれる女性。
あの母校の名前。
彼女はやはり、あのタチバナアズサなのではないか。
そして彼女が話す名も知らぬ渡り廊下の後輩。
特進の理数系クラス。他と比べ少し高めの背丈。テニスで表彰。
彼女がタチバナアズサなのであれば十中八九それは自分のことだ。
よくよく考えると特進の理数系クラスは学年に1クラスだったしクラス内でテニス部に所属していたのは俺1人だけだ。疑惑が確信に変わった。
つい咳込んでしまったものの彼女が隣に座り、何だかんだあって彼女の家に一緒に向かうことになった。
これはもういけるんじゃないの?
少なくともやれることはやれるなんて思ったはずなのにどうしてこうなった!