第3章 思わぬ出来事 side M
出張先はここの最寄り駅から2駅離れたこの辺りで一番大きな駅の近くにある会社。
俺がこの辺りの出身だと言うことを知っていた職場の上司がそこの担当にと推薦してくれた。
そんな一週間の出張を終え、帰る途中で不意に高校時代が懐かしくなり電車を降りた。
真っ直ぐ母校へ向かい部活で何周もした学校の外周をぐるりと一周歩いた。
大きな柵があり校内に入ることはできなかった。
残念に思いながら帰るところで一軒の バーが目に付いた。多分、俺が高校生の頃はなかっただろう。
俺は引き寄せられるかのようにそのバーの扉を開けた。
其処での驚きと言えばもう表現できない。
つい先程まで頭の中にあった学校の思い出、それとリンクされたのはバーカウンターの先に座る女性。
彼女はあの、タチバナ アズサではないだろうか。
懐かしい気持ちも入り似ても似つかない相手を彼女と勘違いしているのかもしれない。
でも本人に見えて仕方がない。
少し思い出そうとしたところでポケットにしまってあるはずの煙草が何処にもないことに気付いた。
今思えば その時の俺は冷静ではなかった。
店主に確認すればいい筈の煙草を売っている場所。自動販売機でもいい、コンビニでもいい。
もしくは此処に 煙草は置いてないかという質問。
きれいさっぱりそんなアイデアはなくスマホの位置情報サービスで最寄のコンビニを調べていた。
歩いて1分もかからないような場所にあった。
店主にすぐ戻ることを伝え俺はコンビニへ向かう。
コンビニの店先で封を開けたばかりの煙草を1本吸いバーに戻ることにした。