第3章 思わぬ出来事 side M
彼女が気になっていたことに気付いたのは彼女の卒業後だったので名前も知らなければ連絡先も知らない。
卒業後の進路も分からなかった。
ところがたまたま図書館で見かけた卒業アルバム。
3年のいつ頃だっただろうか。2者面談の待ち時間に友人と時間潰しに見ていたそれで彼女の名前を知った。
タチバナアズサ。
仏頂面が並ぶクラスの個人写真で一人だけとてもいい笑顔を見せていた。
彼女とすれ違ったとき、横に居た友人らしき人物にアズサって呼ばれてた気もする。
そう思ってはみたもののあまりそこまでして思い出そうとはしなかった。
このぼんやりとした懐かしい、彼女を探していた遊びは誰にも打ち明けなかったし自分でもあの時バーのドアを開くまではすっかり忘れていた。