第3章 思わぬ出来事 side M
どうやら俺達、タチバナアズサ、このバーのオーナー優男、俺の三人は時間を越えて過去に戻ったらしい。
タチバナさんの言う通り、俺が高校を入学した年に。
オーナーさんの見た目が変わらないのは大人の事情らしい。意味がわからない。
が、しかしちょっと待ってくれ。俺は関係ないだろう。
仕事だって順調だし、生活は、まあ、荒れてると言うほどではない、とりあえず仕事は順調だ。
今日は家に帰るつもりだし自宅の冷蔵庫の食材は出張を挟んでギリギリ大丈夫程度だから心配だ。
来週は同僚とフットサルの約束をしているし週末は先月末公開した映画をひとりゆっくり観に行こうとしていた。
水曜日に予定されてる合コンは面倒だと思っていたけれども、これはこれで楽しい毎日を過ごしてたところなんだ。
この目の前に居るタチバナさんにも連絡先くらい聞いて暫く経ってから連絡しようとか、其処まで計画立ててたのに。
とまあ、こんな怒りやらなんやらを仕事ひとつに絞って文句を言った。
が、
『アズサちゃんと一緒にお互い意識して高校生活したかったんでしょ』
この一言に何も言えなくなった。
当時は特に其処まで意識してなかったと言えば其れが本音かもしれない。
自分で意識していることに気付いたのは彼女が居なくなってからだったからだ。
見上げれば彼女がいることに少し安心感を覚えていた。
俺に気づかず友達と楽しそうに歩く彼女とすれ違うことに優越感を抱いていた。
それに気付いたのは彼女が自分を見てただろう3年が使うあの教室での1年間だった。