第3章 思わぬ出来事 side M
何も考えたくなくなってきたら、髪の毛のワックスが気になりだしたのでシャワーを借りることにした。
こうなったとしてもこうなってなかったとしてもこの家に入った以上結局借りていたと思うので此処は遠慮せずに素直に貸して下さいとお願いをした。
タオルの位置だけ伝えるてソファに仰向けに寝転がりブランケットを顔にかけているタチバナさん。
寝たら直るというのは冗談ではなく本気で思ってることらしい。
1人暮らしの女性の家に行くのは慣れてはいるものの相手が自分が過去に憧れていた人。
それも当時は一言も話したことがないただ見て憧れただけの女性だと再確認すれば誰だって緊張する。
当時俺が思い描いていた彼女の人物像より、乱暴に話しガサツな行動が目立つ。
だとしても、彼女はあの時の自分を見ていた先輩だ。自分が見ていた先輩。
緊張しすぎて気持ち悪くなってきたので早急にシャワーを浴びた。
皺になったスーツパンツを履きなおして濡れた髪を乾かしていると玄関ドアの叩かれている音がした。
オートロックの共有玄関があったはずのマンション。
そこを通り抜けたのだから他の部屋の住人か何かだろう。
家主は寝入ってしまったのだろうか。
待っても待っても出ないものだから仕方なく俺がその訪問者を迎えることにした。
「クロサワ君。だっけ?おはよう。あれ?もしかしてお邪魔しちゃった?」
其処に居たのは昨日バーで延々とタチバナさんの俺についての話を一緒に聞いていたオーナーと呼ばれていた男だった。
睡魔の所為で昨日は何もなかったと期待を裏切るような事実を言ってのけたらタイミング間違えちゃったって独り言言ってた。
この状況をどう説明しようかと考えていたのだが、そもそも元凶はこの男。
「僕は君たちに高校生活2年分をプレゼントすることにしました」