第2章 思わぬ出来事
2本目の煙草を吸い終える頃お風呂の準備ができた音が鳴った。
クロサワはその少し大きめの電子音で目が覚めたようだ。
「俺、寝てました?」
ちょっと気の抜けたような声が少し可愛かった。
遠慮するクロサワに無理やり先にお風呂に入らせ普段私が使ってる男女兼用の大きめのスウェットを脱衣所においた。
歯ブラシをくわえ脱衣所から出てきたクロサワは昨日これを借りてればスーツがシワになることはなかったと拗ねていた。
容姿が幼くなっただけなのに何故だか行動まで幼く見える。
そりゃ途中で寝たんだから仕方ないでしょ。
それにそうじゃなかったとしても行きずりの男にこんな色気のないスウェットパンツ持ってるなんて思われたくない。
「そんなもんですかねー」
彼の笑った顔が教室の窓からいつも探してた顔そのものだった。
恋心が消えたとはいったもののなんだか、この顔には弱い。
「何赤くなってるんですか、俺が風呂に入ってる間に隠れて酒、飲んでたんですか?」
「うるさい。私の家なんだからいいだろ。私も入ってくるから適当に過ごしてなさい」
「お風呂お先でしたー」
随分とタイミングの遅い挨拶をしたクロサワは自分の鞄をもって自室となった元私の書斎へ消えていった。
本当のことを言えばお酒なんて朝飲んだ数杯だけだ。
顔が赤かったのはあの笑顔を見たせいだと気づかれたくなかった。