第2章 思わぬ出来事
お互いの今までの経歴を共有するためにクロサワと話をした。
私のお遊びの研究とやらにも若干引きぎみではあったもののそれのお陰のこれからの2年間ということもあり まあ協力できることはしますよ って笑ってた。
オーナーの持ってきた段ボールには制服、教科書の他に筆記用具なんかも入っててその奥には少しばかりの現金と、通帳と印鑑が私たち名義で入ってた。
上についてたポストイットには「勝手に巻き込んだ慰謝料ですよ(´Д`)」とオーナーの字で書かれていた。何この顔文字。
中身を見ると私のお給料の何年分かもわからない額が入っていた。
どうやらクロサワの方もそうみたいでこれならあの車買おうかななんて言ってた。
クロサワがほしい車は私も興味ある車だった。
しかし今の私たちは高校生。
そんな私たちでは車の運転、これはさすがに不味いことを伝える。
そのときの落胆したクロサワの顔。
この世の終わりのような、そんな顔をしていた。
私は車を買った際、一度は運転させてもらうことと2年間料理はクロサワに任せることを条件に私の名前の通帳から二人で使う事を提案した。
多分2人の2年間の生活費になったとしても余るだろう。
この通帳にオーナーへの不信感は募るばかりだけれどもこの際どうでもよかった。
クロサワは大層喜んでいた。
そりゃあそうだろう。あの車、結構高いからな。
まあ、私は料理が嫌いだし、それ以前に出来ないし。
あの車のハンドルを握れるというだけでテンションが上がった。
「じゃ、頼んだよ」
「了解です」
彼は後輩、であることを演じるためだろうか。
私が先輩と呼べ、そう言ってからは敬語で話してくる。
こっちの方が面白いから私は大歓迎だ。
しかしながら、一つだけ残念な事がある。
憧れの後輩がこんな身近になったことで恋心なんてのは一気に覚めてしまっている。
クロサワも多分そうだろう。いや分かんないけど多分そう。
もし彼が私を知らないまま私だけがここに来たのだけなら試したいと思っていた事はたくさんあった。
昨日オーナーに話していたように。
でも、そんなわけにもいかなくなったこの状況。
残念といいながらも状況を知る相手が近くに居る安心感なんてものもある。
これから2年間、どう楽しもうか。私の頭はそれでいっぱいだ。