第1章 ここから始まった
「貴方を探すことは好きだったかもしれな...っ」
言葉を言い終える前に彼は私に口付けた。
そんな言い方じゃ、足りないかもしれない。噛み付いた、そのくらいの勢いだった。
クロサワ君の舌が私の歯列をなぞってそのまま舌を絡める。
私は何処かで彼を甘く見ていたのかもしれない。
話の種、だった筈なのにこの段階でかなりもっていかれてる。
「先輩、かわいい」
ギュッと抱きしめられて心臓が跳ね上がった。
「ね、分かる?俺も少し緊張してる」
確かに心臓の音が大きくなってるのは知ってるけど、多分、アルコールの摂取しすぎなだけじゃないかしら。
ドキドキとしながらもそんな冷静に分析できる自分も此処に居る。
冷静な判断によって考えてしまった無粋なことは心の奥にしまって、私は彼の言葉に答えるつもりで抱きしめ返した。