第1章 ここから始まった
なんとなく、そういう空気になりそうでならない時間がすぎた。
とりあえず、シャワー浴びる?
そう思ったけど、酔いが覚めそうな気がした。
できればこのふわふわした心地よくてあの頃を思い出してるときにしたくなって
何も言わずに立ち上がってクロサワの手を引いて寝室へ向かった。
「これは、コーコーセーっぽくないでしょ」
そうクロサワが言った部屋はそのとおりである。
ほぼベッドでいっぱいになった寝室。ベッドの横にあるエンドテーブルの上に間接照明。
黒を基調としたこの部屋にはそれ以外に何もない。
「学習机とかないの?」
部屋を見渡したクロサワが当たり前のことを聞いてきた。
「あるわけないじゃない。馬鹿じゃないの」
「だから先輩はベンキョー出来ないんですね」
どうやら後輩ごっこが始まったらしい。
まあ、勉強が出来なかったからそれはしょうがない。
「勉強もスポーツも出来るクロサワ君とは頭の出来が違んじゃない?」
ベットに腰掛けてジャケットを脱ごうとすると、俺にやらせて下さいってクロサワ、いや、クロサワ君は私の手を止めた。
「ふーん。俺が教えてあげましょうか」
私のジャケットを床に投げ捨て、ブラウスのボタンを外しながら笑っていた。
ベッドが沈み込んでそのまま押し倒される。
「遠慮しとく。勉強は嫌い」
「じゃー何なら好きなんですかね」
ブラウスのボタンを外し終えたクロサワ君が今度は私の髪を指先でくるくると弄んでいる。
私に覆いかぶさったままこっちを真っ直ぐ見ている。
クロサワが本当にあの後輩に見えた。