第1章 ここから始まった
クロサワ コーキ
それが彼の名前らしい。
何か聞いたことある名前って言ったら、よくある名前だと笑ってた。
よくある名前か? そう疑問に持ちながらもテキトーに話してた。
どうやってこいつを持って帰るか、とも頭の片隅では考えていたけど。
クロサワはどっかから出張できたらしい。
今日は金曜日だから直帰していいと言われていたので帰る前に、この辺りを少し散策していたらしい。
彼の話によると今は遠くに住むものの、昔この近くで生活していたようだった。
懐かしく思い歩いているところ、この店があったので入ってみたと言う。
ここで時間を潰して新幹線で帰るらしい。
「ゆっくりしてってください。終電でも問題はないでしょうし」
オーナーの口にした時間を稼ぐためのこの言葉はかなり有効だった。
いや、有効すぎた。どうしてこうなった。