第2章 おかえり。
ふと、真琴の頭に、幼少期の記憶が甦る。
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真琴たち3人が、幼稚園の年中だったある日のこと。
「ハルちゃん!ハルちゃん!」
遙と真琴が二人でブロックで遊んでいると、後ろから悠がパタパタと駆け寄ってきた。
名前を呼ばれた遙が振り返ると、にっこりと笑った悠がいた。
遙「悠、どうしたの?」
「ハルちゃんっだーいすきっ!」
そう言い幼い日の悠が、チュッという音とともに遙の唇にキスをした。
突然の出来事に固まる遙と、隣で目を見開き唖然とする真琴。
「ママがね、ちゅーは大好きな人にするんだよって言ってたの。だから、悠、ハルちゃん大好きだから、ちゅーしたのっ」
嬉しそうに笑いながら話す悠。
不意打ちを喰らった遙は幼心にドキドキしながら、真っ赤な顔の口許を手で押さえていた。
真琴「えっ!じゃあ、悠は僕のことは好きじゃないの?」
そう言う真琴の目には涙が滲み、今にも泣きそうな様子であった。
「ううんっ!まこちゃんも大好きだもん!だから、まこちゃんともちゅーしなくっちゃ!」
再びチュッという音が響くと今度は真琴と悠の唇が重なった。
唇が離れると、すっかり笑顔に戻った真琴が悠に笑顔を向けた。
真琴「僕も、悠のこと大大大好きだよ!」
真琴が悠を抱き締めると、悠は嬉しそうに笑う。
「まこちゃん、大好き~!悠、大きくなったらまこちゃんのお嫁さんになる~」
すると、ムッとした顔の遙が近づき、真琴に抱きついたままの悠を後ろから抱き締めた。
遙「……僕のお嫁さんにはならないの?」
悠は遙の方に振り返るとにっこりと笑った。
「悠、ハルちゃんのお嫁さんにもなるよー!それでねっ3人でずぅ~っと一緒にいるんだもん♪」
真琴「うんうん!ずっと一緒だよ~!」
遙「悠は、僕と真琴で守るから!」
「うんっ!ハルちゃんっまこちゃんっ大好き~!」
ぎゅうぎゅうとお互いを抱き締めながら3人は笑顔で未来に夢を抱いた。
___それが、叶わぬものとは知らずに……