第2章 おかえり。
息を切らしながら駅へとたどり着くと、駅の前に大きなボストンバッグを抱えた女の子が立っていた。
彼女が目に写るなり、遙と真琴の心は一際大きく跳ね上がった。
真琴「あっ……!悠だ……… 悠ーーっ!!」
真琴が手を振りながら大きな声で女の子を呼ぶと、
二人に気づいた彼女の顔が綻んでいき、笑顔になった。
「___まこちゃんっ!ハルちゃんっ!」
悠は二人の元へと駆け寄ってこようとするが、荷物が重いようで、あまりスピードが出ていなかった。
真琴と遙はそんな彼女の前まで駆け寄ると、真琴は手を差し伸べ悠の荷物を受け取り、遙はそれを見つめる悠の額を軽く指で弾いた。
「わっ……まこちゃん、ありがと___っい、痛いっ!?」
突然の衝撃に驚いた悠は額を擦りながら、少しムッとし目に涙を浮かべた顔で遙を見上げた。
当の本人は小さく息を吐くと、顔を背けてしまった。
遙「……ちゃん、付け止めろ。………… 悠。」
遙の言葉に悠は再び笑顔になり、遙の顔を覗き込もうとしていた。
一方の遙は照れた顔を見られまいと顔をブンブンと振りながら彼女の視線から逃げていた。
その二人のやり取りを見ながら真琴は小さく笑った。
真琴(……何かほっとするな……こーゆーの………)
昔はいつも一緒だった遙たち3人。
幼稚園に入る前から一緒だった遙たちは、親同士も親交が深いこともあり、ほぼすべての時間を一緒に過ごしていた。
小学校卒業までの間、クラスさえ離れたことは無かったほどで。
もちろん彼女も真琴と遙と同じく岩鳶スイミングスクールに通っていた。
しかし、彼女が小学校を卒業後に東京へと引っ越してしまい、いつの間にか真琴と遙は二人でいることに慣れてしまっていた。
だが、こうして3人が揃うと、今まで離れていたのが嘘だったかのように、3人でいることが当たり前のように感じられた。
真琴「くすっ……こらこら。悠、ハルが嫌がってるよ?」
真琴が笑顔で彼女に声をかけると悠はいじけたような表情で真琴を見た。
真琴(………やっぱ、最高に可愛いな……///)