第2章 おかえり。
目の前でエプロン姿のまま黙々と食事をする遙を真琴は机に肘をつき、眺めていた。
真琴「もうあれから3年半も経つんだねぇ……。急に帰ってくるなんて言うから驚いちゃったよ。」
真琴が微笑みながら感慨深い様子で話しだすと、一瞬遙の箸が止まり、真琴へ視線を向けた。
遙「……そうだな。」
そう呟くと遙は再び朝食へ箸を進め、最後の一口を口へ運び、そのままの流れで顔の前で両手を合わせると、空いた食器を台所へと運んでいった。
その姿をなんとなく見つめていた真琴だったが、ふと目に写った時計の時刻を見て急に汗が吹き出してきた。
真琴「わっ!?まずいよっハル!!あと15分で悠着いちゃう!!」
慌てて真琴は玄関へと向かい、靴を履き始めるも、焦りすぎてるためか、なかなかうまく履けずに手こずってしまう。
すると、準備を整えた遙が悠々と靴を履き終え、慌てる真琴を一瞥した。
遙「…何やってんだ?早く行くぞ。」
そう言い遙は真琴に背を向けると、そのまま玄関の扉を開き外に出ていってしまった。
真琴「えっちょっ!待ってよー!ハル~!!」
その後ろ姿を真琴が遅れて追いかけていく。
程無くして並ぶ二人の影が道路に伸びる。
彼女が乗っている電車が岩鳶駅に到着するまであと10分。
ここからはダッシュして駅まで向かうことになりそうだ。