第2章 おかえり。
ザバァ――ッ
水しぶきとともに、浴槽から男の顔が現れる。
真琴は彼に手を伸ばす。
真琴「おはよう。はるちゃ――」
遙「ちゃん付けはやめろ。」
真琴を見上げる青い瞳。
遙が真琴の手をつかみ立ち上がると、思っていた通りの格好で――
真琴「ごめんごめん…ってやっぱり水着…」
少し呆れ気味の真琴のことなど全く気にするようすもなく、この家の家主である”七瀬 遙”は浴室から出て行った。
真琴「ハル、今日悠が帰ってくる日って覚えてるよね?」
遙「…判ってる。もう着替えた。」
真琴「えっ何だ、心配しちゃったじゃ――ってエプロン!?ハル!?電車到着するまでもう時間ないんだよ!?」
着替えたとの言葉に安堵した自分が甘かった…
目の前の男は”洋服”に着替えたわけではなく、”エプロン”に着替えた(性格には水着の上に纏った程度)だけであった。
遙「これから鯖を焼いて食うからな。それに、電車の時間のことも判っているつもりだ。」
”判っている”といいつつ、一向にあせる気配のない遙に真琴だけがあわあわと慌てふためいていた。
真琴「はぁ~…俺が甘かったのかな…」
頭を抱え嘆く真琴を全く気にする様子もなく、遙は淡々と朝食の準備を進め、居間へと移動していった。
真琴は呆れながらもその後ろについて今へと足を運んだのだった。