第2章 おかえり。
重なる二人の唇からは互いの熱が感じれ、それは二人がそこに存在している、ということを証明しているかのようだった。
重なっては離れ、角度を変え再び重なる。
どのくらいの間そうしていたかは不明だが、二人は幾度となくお互いの熱を確認していた。
遙「悠が…足りない。もっと……もっと、俺にお前を感じさせろ。」
普段あまり話す方ではない彼の飾らない真っ直ぐな思いに、心が震える。
答える代わりに熱を帯びた遙の瞳を見つめ返すと、口、と小さく呟く遙。
その意に答えるように、閉じていた唇を薄く開く。
するりと入り込んできた彼の熱い舌は、悠の口内をかき回し、舌を絡め、上顎をチロチロと刺激した。
「んっふぅ………んんっ……はぁ///」
遙によって与えられる甘い快感に思わず、悠の口からは吐息とともに淫らな声が漏れる。
耳に届く自らの淫靡な声に恥ずかしさを覚え、そのことがさらに気持ちを昂らせていった。
真琴「____悠~?」
遙/悠「____!?」
突如聞こえてきた玄関の扉を空ける音と、自分の名を呼ぶ真琴の声に、二人は密着していた体を勢いよく離した。
すぐに現れた真琴の姿。彼は先程までの二人に何があったかなど気づくこともなく、柔らかな笑顔を見せていた。
真琴「いたいた……って、ハル?そっか、まだ話してたんだね?遅いから心配しちゃった。」
遙はふい、と横を向くと「帰る」と呟き、階段を上がっていった。その後ろ姿を真琴と悠は暫くの間見つめていたが、下ろされていた手のひらに感じる熱によって、意識をこちらに戻した。
真琴「…帰ろうか。手……冷たくなっちゃったね。」
「………うん。マコちゃんの手、暖かいね。」
きゅ、と握られる手に伝わる真琴の熱。
そこにそっと込められた真琴の思いは彼女に届くだろうか。
真琴(ハルじゃなくて………俺のことも、見て……)
それに気づいたのか気づいてないのか目の前の彼女はふわり、と微笑んだ。
「………帰ろう? 蓮たち、待たせちゃったしっ」
真琴は頷き、笑顔を返す。
繋いだ手はそのままで、家へと彼女を連れ、進む。
真琴(悠が帰る家が、いつでも此処ならいいのにね。)