第2章 おかえり。
皆で食卓を囲んでの夕食は楽しかった。
家族がたくさんいるとこんな感じなのかな、と悠は思いながら、わいわいと楽しい時間を過ごした。
夕食が終わると遙は帰る、と言い出したので、蘭と蓮と真琴とともに玄関まで見送った。
一度は軽く手をあげ挨拶したが、扉に手をかけた時、遙の視線が再びこちらを向いた。
遙「……悠………ちょっとだけいいか?」
「……?うん。」
遙とともに家の外に出ると、既に空は闇に包まれ星の輝きのみが地を照らしていた。
ひゅう、と肌を撫でる風は冷たく、悠は自らの体を抱き締めるように暖を取ろうとした。
しかし、その手は自らの体を抱き締めることはなく、代わりに悠の手を掴んだ遙の手によって、引き寄せられていく。
トン___
辿り着いた先は、ほどよく筋肉がついた遙の胸。
気がついた頃には自分の体は遙の腕の中にすっぽりと包まれていた。
驚いて見上げると、彼の青い目が水分を得てゆらりと光る。
瞬間__ぎゅう、と胸が掴まれるような感覚に襲われ、悠は動揺している自分に気づく。
「___は、遙___」
遙「悠。」
目の前の整った形の唇から発せられる自分の名前。
だんだんと速まっていく鼓動。
遙「……家に来てほしかった。」
小さく吐き出された音が耳に届くと同時に遙は少し苦しそうな表情を見せていた。
「……うん……ごめんね……。でも、明日からは……ずっと一緒だね?」
遙は小さく頷くと、悠の体を抱き締める力を
強め、外気に触れ冷たくなった細い首に自らの頭を埋めた。
遙「………もう、離れんなよ。」
「……うん。離れないよ。」
遙「明日は………離さないから。………覚悟しとけ。」
"覚悟しとけ"という言葉に冷えたはずの体が、瞬時に熱を帯びていくのを感じ、悠はそのことが遙に気付かれないよう彼の背中に回した手に力を込めた。
「…………はい///」
小さく答えると今まで首筋に感じていた彼の柔らかい髪の感触が消え、目の前に整った遙の顔が現れた。
遙「……… 悠……」
いつもより少し熱を含んだ声で名前を呼ばれた悠は、そっと瞳を閉じる。