第11章 作成中
「どこから送ってくれたの?」
「すぐ近くなんですよ、ほんの数分・・・」
「3駅分とちょっとだよ」
気を使って正直に言わない功平に代わり、私が本当のことを伝える。
え!?と大きな反応を見せる母と、余計なことを・・・と訴えるように目線を私に向ける彼。
「この時間帯じゃ混んでたでしょう?30分は掛かったんじゃない?」
「いえ、本当にそんな・・・」
「こんな寒い中・・・。ねぇ、迷惑じゃなかったら少し暖まっていかない?丁度みかんが食べたくなって買ってきたところなのよ」
もう完全に功平を受け入れた母は、先程までとは打って変わって彼を気に入っている模様。
「あの、本当にお構いなく・・・」
「何言ってるの。こんな寒い中時間かけて送ってくれて・・・それでまた同じ時間かけて帰るんでしょう?ダメよ、風邪ひいちゃう」
「そうだよ、上がってって」
母の言う通り。雪でも降るんじゃないかと思う程に寒い気温の中、バイクは身体に風をそのまま受けて走る。風邪をひいてもおかしくない。
少し暖をとるだけで、寒さも違ってくるだろう。
「じゃあ・・・お言葉に甘えます」
断る術もなく折れた功平は、かなり緊張しているよう。
「緊張してる?」
「そりゃするだろ・・・」
バイクを駐輪場に停める為、母には先に家に戻って貰った。バイクに手をついて深い溜息を漏らす彼に、思わず笑いがこみ上げる。
「・・・何笑ってんだよ」
「だって、こんな功平くん初めて見るんだもん(笑)」
「・・・多分、今までで一番緊張してるかも」
「そんなに?うちのお母さんあんな感じだし、緊張しなくていいよ」
何を言っても今はダメそう。でもいつまでもそうしてる訳にはいかないので、彼を引っ張って家に連れて行く。
「ただいまー」
「、お邪魔します」
「いらっしゃい。どうぞ、上がって」
狭くてごめんなさいねー、と母がリビングに通す。
私が先にコタツに入り、隣をポンポンと叩いて彼を座らせる。じゃないと、いつまでも座らずに立っていそう。
「足崩していいのよ。コタツなんだから、ね」
「あ、はい。ありがとうございます」
今時珍しいくらい礼儀正しいのね!と、彼の動作一つ一つに感動している母。
徐々に功平の緊張も解れ、出されたみかんを素直に食べ始めた。