第11章 作成中
「いきなり何言い出すのかと思ったら・・・」
「やっぱりそうなんだ。何に拗ねてるの?」
「だから拗ねてないってーの。・・・つーか、分かってねえのかよ・・・」
「え?何?」
「別に」
マフラーを鼻先まで持ち上げる功平。ボソッと呟いた言葉は聞こえなかったし、結局何に拗ねているのか分からずじまいだったが、声のトーンでいつもの功平に戻ったのは分かった。
「夕飯ありがとう、美味かった」
「ううん、こちらこそありがとう!そんな風に言って貰えて嬉しい。あんなので良ければ、私いつでも作るよ」
「いつでも?」
「うん!」
「ふーん。じゃあ考えとく」
「・・・何を?」
そう聞いても結局はぐらかされて教えて貰えず。でも、料理のことで喜んで貰えたのは心から嬉しい。
そんなこんなで駅は目前に迫っており、あと数歩の所にある角を曲がれば着く。そろそろお別れ・・・
「・・・え、ちょっ、」
のはずだった。
「こ、功平くん!?」
普段ならその角までまっすぐ歩くはずが、何故か今日は途中にある別の角を曲がった。
そして連れて来られたのは、駐輪場。
「乗って」
送るから、なんてサラッと言っているが、彼が跨っているのは自転車・・・ではなくバイク。ヘルメットを渡されるも、すんなり受け入れられる訳もなく
「えぇ!?私バイクなんて乗ったことない・・・ってか、駅すぐそこだから電車で帰るよ!」
「いいから。ほら、早く」
「早くって言われても・・・、ぅわっ!」
遮るように強制的にヘルメットを私に被せる。その直後にスルッと輪郭に彼の指が触れたかと思えば、顎の部分でカチッと紐が固定される音がした。
(・・・ビックリした)
手慣れたようにバイクに乗れる準備を済ませると、功平は心配すんな、と笑った。
「・・・どうしたらいい?」
完全に折れた私は大人しく功平の後ろに座る。
「ここ、しっかり掴んでて」
ここ、と私の腕を引っ張って導いた先は、功平の腹部。
「ちゃんと捕まってないと落ちるかもよ」
めっちゃくっついてる・・・!なんて緊張したのもつかの間で、バイクが走り出せばそれどころじゃなくなり、言われた通り落ちないように必死に彼にしがみついた。