第11章 作成中
「ごめん、遅くなった」
シャワーを済ませた功平がリビングに入って来た。彼は遅くなったと言っているが、浴室に行ってから恐らく10分もかかっていない。
「急がなくてよかったのに・・・」
「別に急いでないよ、いつもこんなもん」
笹倉家の皆に挨拶をして2人で外に出る。
そういえば、こうして2人で歩くのは久し振り。一時期はよく功平に送って貰っていたが、最近はそういうこともなかった。
「すっかり慣れたな、お前」
「え?」
「人見知りしなくなったじゃん」
まっすぐ前を向いて話す功平は、怒っているのかそうでないのか分からない程落ち着いている。相変わらず何を考えているのかイマイチ読めない。
「うん。確かに今は全然緊張しなくなったし、皆といると安心する・・・かも」
「かも、って何だよ(笑)」
あ、笑った・・・?ってことは、怒ってない?頼りなのは自分の聴力と、マフラーの隙間から僅かに覗く表情のみ。
「・・・何」
「な、何でもない・・・です」
「・・・そ」
そっけない返事だけど怒っている訳ではなさそう。それだけは何となく分かった気がした。重い空気ではない。
ただ・・・機嫌が良さそうでもない。
「あの・・・夕飯、手伝ってくれてありがとう」
「どういたしまして。まぁ、ただ皮むいて切っただけだけど」
「ううん、本当に助かった。私、皮むき苦手で・・・」
「なら良かった、役に立てたみたいで」
意外と普通に会話で来てる。私の考えすぎ・・・?でもやっぱり、胸のザワザワが取れない。
これはもう聞くしかない。
「・・・ねぇ、功平くん」
「何」
「お、怒ってる?」
「は?怒ってないよ。何言っ・・・」
「じゃあ・・・拗ねてる?」
「はっ!?」
思い切って聞いてみた。気になっていた、今日琇が言っていた言葉。功平の態度に加え、この言葉も不安になる要因の一つ。
まさかの的中なのか、ずっと前しか向いていなかった功平が、ついにこちらを向いた。しかも、顔を赤らめて。