第11章 作成中
「つーか、今日コイツが来るなんて聞いてないけど」
エプロンのことはさて置き、鞄と制服のブレザーをソファに放りながら功平がぶっきらぼうに話す。不機嫌なのは一目瞭然。
「功達が帰って来るまでに家に帰す予定だったからね。会わないだろうし、わざわざ言う必要もないかなって思ってさ。でも夕飯まで作ってくれて本当気が利く優しい子だよね」
琇の言葉を聞いているのかいないのか、頭をワシャワシャ掻きながら功平は私の方に歩いてくる。
怒られる、とすぐさま察知する。私に対して怒っているのは初めの方から感じていた。きっと私が来ていることを聞かされてない上に、勝手に台所を使ったりしたから・・・
「あ、あの・・・ごめんなさ、」
「これ、切ればいいの?」
謝る私を通り過ぎ、功平はまな板の上に置かれた皮の剥き途中だったジャガイモを手に取った。
「手伝う」
まさかの言葉に、え・・・とつい口から溢れた。
「何」
「い、いや、だって・・・怒ってる、よね・・・?」
「・・・別に」
恐らく口癖に近いだろうこの言葉。でも、同じ言葉なのに聞こえが違う。
・・・やっぱ怒ってる。
「これ、味噌汁に入れんの?」
「う、うん」
「オッケー」
戸惑う私をよそに、功平は器用にジャガイモの皮を剥いていく。
私はどうしたら・・・
困って後ろの琇に目配せすると、おいでおいで、と手招きをされた。ササっと近寄る私に琇は小声で話す。
「安心していいよ。あれは怒ってるんじゃなくて、拗ねてるだけだから」
「え、拗ね・・・」
「てねーから。余計なこと言ってんな、全部聞こえてる」
「相変わらず地獄耳だね」
「この距離で聞こえない方がおかしい。絶対わざとだろ」
んで、お前はコッチ、と功平に腕を引かれて台所に隣同士で立つ。何事もなかったように作業を開始する功平は、これまた悔しい位手際がいい。
「・・・何?」
「な、何でもない!」
バチッと目が合い、横目で見ていたのがバレた。慌てて他の作業を始めるが、胸中穏やかではない。
絶対・・・絶対、怒ってるよね。
「・・・帰りは俺が送るから」
「え・・・いや、大丈・・・」
「分かった?」
「・・・・・・はい」
怒ってました。