第11章 作成中
あと数日でテスト休みが終わってしまうある日の夕暮れ。私は笹倉家にお邪魔している。目の届く場所で竜を寝かせ、静かに陽太と遊んでいる。
何故笹倉家に、陽太、竜、私の3人だけなのかと言うと・・・・・・話は昨日の夕刻に遡る。
「あれ、とも?」
「、え!琇くん・・・?こ、こんばんは!」
「こんばんは。こんな所で会うなんて奇遇だね」
「本当に!あービックリしたー」
「俺も(笑)」
駅構内にある本屋でバッタリ。しかもここは私の地元であり、琇の地元はここから2つ隣の駅。まさかこんな所で会うなんて。
「どうしてここに・・・?」
「大学のレポートの為に欲しい本があってね。さっきまで他の用事でこの近くにいたからついでに立ち寄ったんだ。ともは?」
「私はふらっと入っただけで・・・(笑)。それより、欲しい本はあった?」
「うん、今レジに行こうと思ってて。ともは何か買う物はある?」
「ううん、ないよ」
じゃあ外で待ってるね、と足早に琇の元から去る。
もし、あると言ってしまえば、琇は間違いなく私の分まで支払う。私も妹がいるから色々してあげたくなる気持ちは分かるが・・・琇はし過ぎな気がする。
「お待たせ。本当に欲しいのはなかった?遠慮してる?気遣ってる?」
「本当にないの(笑)。てか、琇くんの方が気遣ってない?」
「全然!素だよ、素」
琇が駐車したコインパーキングまで一緒に歩くことに。琇は悪いからと断ったが、そう2人で話す機会もないので断りを押し切って勝手に一緒に歩いている。
「寒くない?大丈夫?」
「大丈夫だよ。琇くんは?」
「俺は大丈夫だけど、ともは女の子なんだからあまり身体冷やさないようにね」
なんて私のことを心配する琇。
本当、いつも自分のことより人のこと。
「そういえば、この間の史哉の件、改めてごめんね」
「ううん!薫さんに凄い助けて貰っちゃった」
「あーそうそう、薫が偉くとものこと気に入っててさ。早く店に連れて来いって煩いの」
「えー嬉しい!行きたい!」
先日の例のイタリアンのお店での一件、あれはすぐに琇にも知らされたらしい。その日の内に琇から何故か謝罪の連絡が来たのだが、麻乃の家にいた私は、麻乃にバレないようにするのが大変だった。