第9章 トクベツ授業
(な・・・に・・・・・・?)
あまりに突然で、一瞬何が起きたか分からないし声も出ない。引っ張られた右手は掴まれたまま、私は功平の隣に倒れ込んでベッドに横たわる。
すると彼はスッと私を跨いで離れた。
「1時間経ったら起こすから」
「、なっ・・・ぶふっ!」
掛け布団を頭の上まで掛けられ、抵抗する暇もない。パチン、と電気を消す音に慌てて布団から抜け出すも、丁度良く彼が部屋を出て行った瞬間だった。
さっきのは一体何だったのか。なんて、暗い部屋に1人残されポカーンと呆ける。とりあえず・・・
「顔、見られなくてよかった・・・」
遅れてやって来た少しの動悸と、程なくして熱くなり始めた顔はきっと赤らんでいるはず。いきなりあんなことされたら誰だってビックリするよ・・・なんて、心の中で軽く毒突く。
ていうか、あれ絶対・・・女の子慣れしてる。
「ただいまー」
部屋の外から聞こえた悠輔の声。起きてるし、おかえりって言えばいいんだけど・・・何となく気まずい。
「・・・寝よ」
結局、功平に言われた通り寝ることにした。密かにムカムカする気持ちを抑え、私は半ば無理矢理眠りについた。
「、んん・・・」
あれ、私寝てたんだ・・・なんて思う位フワッとした感覚で目が覚めた。携帯は手元にないし、確か功平の机の上に時計があったことを思い出して身体を起こす。
と共に、ビクッと身体を揺らしたのは他でもない私。
「・・・・・・功平、くん・・・?」
デスク上のライトを薄く付けて、その机に突っ伏している功平の姿。誰もいないと思っていただけに、驚くには充分な要素。
近づいてみると、どうやら勉強をしていたようでテキストやノートが開いている。呼び掛けても起きない彼はきっと疲れているのだろう。そう思い、先程まで借りていた掛け布団を彼にそっと掛ける。
「あ、おはよう、とも。・・・あれ、兄貴は?」
そっと部屋を出てリビングに行くと、ソファで寛ぐ悠輔や陽太達の姿があった。
「えっと・・・寝てる」
「は!?まさか一緒に・・・」
「そ、そんな訳ないでしょ!」
慌てて事情を説明すると、疑いの眼差しを案外素直に解いてくれた悠輔。どうやら功平は、1時間程前に私を起こしに部屋に行ったのだとか。
時刻は20時前。きちんと目覚めて良かったと胸をなで下ろす。