第9章 トクベツ授業
バイト前の貴重な時間にわざわざ私の勉強をみてくれたのかと思うと、嬉しさよりも申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
琇を見送ってすぐ、勉強が終わったことを知らせに功平の部屋へ向かう。何度かノックをしてみるが、返事がない。
「・・・失礼しまーす」
どうしようか迷ったが、気になってコソッとドアを開いてみると・・・
(・・・・・・寝てる)
掛け布団も掛けずにベッドに寝ている功平。一緒にいると思っていた陽太と龍がいないので、陽太の部屋に行く為出て行こうとした時
「・・・あれ、終わった・・・?」
と、身体を起こして眠そうに片目を開いている。
「あ・・・うん。ごめん、起こしちゃった・・・?」
「いや、勝手に目覚めただけ。・・・勉強お疲れさん、どうだった?」
こっちに座れとでも言うように、トントンとベッドを叩く功平。サイドに腰掛け、学校と琇に出された小テストを見せる。
「お、出来てんじゃん」
「うん、昨日功平くんに教えて貰った所が出たの。功平くんのおかげだよ」
「俺じゃないよ、睡眠のおかげ」
昨日は確かに、彼に言われた通りきちんと眠りについた。よく出来ましたと褒められるが、子ども扱い過ぎて何となく喜べない。
「・・・何で不貞腐れてんの?」
「・・・別に」
「・・・俺のマネのつもり?」
「うん」
「・・・・・・」
嫌そうな顔つきで私を見る彼に、負けじと私も目を細めて見つめ返す。やれやれ、といったように諦めたのは、功平の方だった。
「記憶は寝てる間に定着されるんだよ。あとは・・・今日の授業はどうだった?」
「んー・・・昨日教えて貰ったから、いつもよりは理解出来たかも」
「その上、しっかり睡眠とってるから眠くならずに集中出来たんじゃない?」
・・・確かに。功平の言う通り、いつもなら勉強してもチンプンカンプンで眠くて、集中力どころかやる気さえ起きなくなるはずなのに、今日はしっかり授業を受けて小テストもなかなかの点数を取ることが出来た。
「これで睡眠がどれだけ大事なのか分かった?」
「・・・うん」
凄いなー、と納得させられた私の身体が
「じゃあ」
グイッ
「、わっ・・・」
グラリと傾き
「寝よっか」
背中から伝わるベッドの弾みと共に、白い天井と・・・ニッコリと笑う彼が、私の視界を支配した。