第9章 トクベツ授業
「ここ、寝癖ついてるよ」
「え・・・うわー本当だ!最悪・・・」
時間も時間なので帰ろうと鞄を掴んだ私に、悠輔が教えてくれたなかなかに跳ねている寝癖。
整えること数分して、私は息を潜めて功平の部屋へ入った。せっかく寝ているし・・・と悩んだが、夕飯や風呂があるから丁度いいと悠輔に言われ、帰ると一言述べるついでに起こすことになった。
相変わらず机に伏せて寝ている功平くんは、やはり呼んだだけでは起きない。可哀想だけど、仕方なく肩を揺する。
「功平くん、起きて」
「・・・ん、」
ようやく目を覚ました彼は完全に寝ぼけ眼。
「悠くんに起こしてきてって頼まれたの。・・・起きれそう?」
「・・・うん」
「良かった。じゃあ、私そろそろ帰るね」
「え・・・今何時?」
「20時過ぎ」
彼は時間を聞くや否や、一瞬目を見開いてすぐに項垂れる。
「ごめん、いつの間にか寝てた・・・」
「へ?何で謝るの?」
「・・・他に分かんない教科とか確認しようと思ってたんだけど・・・」
予定より30分も寝過ごした、と眠そうな顔のまま溜息をつく。
「明日はちゃんと確認するから」
大丈夫、もう充分過ぎる程助けて貰ってる。どんなにそう言っても聞き入れてはくれない彼に、今日も駅まで送って貰っている。
「功平くんだってテストあるんでしょ?」
「俺は俺でちゃんとやってるから大丈夫」
「でも・・・」
「それよりお前、寝てる時口開いてたぞ」
・・・・・・・・・は?
「う、嘘・・・てか、見たの!?最低!」
「起こしに行ったんだから、そりゃ見るだろ」
「だからって・・・酷い!」
「お前だって俺の寝顔見たんだろ?」
「そう、だけど・・・」
「お互い様じゃん」
「・・・・・・」
返す言葉がなく、悔しさでむくれる。
「写真撮っとけば良かったかな」
「や、やめてよ!見られただけでも恥ずかしいのに、写真なんか撮られたらもう・・・」
「はいはい、しないから。そんな怒るなよ」
「本当に?絶対だからね?」
「んー、絶対と言われると・・・」
「・・・功平くんって、実は性格悪い?」
「さぁね」
悪戯に笑う彼に、更にむくれる私。それを見てまた笑う彼は、気をつけて帰れよ。と、急に少し真剣になる。どれが本当の功平なのか。
完全に振り回されている。