第9章 トクベツ授業
「大体は功から聞いてるよ。昨日はちゃんと寝れた?」
リビングでテキスト等を出しながら聞かれた問いに頷くと、よし!と何故か笑顔で褒められた。こうして見ると本当に家庭教師のようで新鮮。
「そういえばとも、歴史が苦手みたいだね?」
「うん・・・。あ、でもね、今日の小テストは点数が良かったの」
歴史の授業開始の10分間で行われる、1問1点の10点満点の小テスト。いつもは5点いけば良い方なのに、何故か今日は9点。何と、昨日功平に教えて貰った所が出た。
すると、琇は一枚の紙を私の前に差し出す。
「実は俺も小テスト用意したんだ。制限時間は同じく10分」
「え、いきなり!?」
「うん、抜き打ちテスト」
戸惑う私に構うことなく、よーい・・・スタート!と元気良く始められた抜き打ち小テスト。
(無理無理無理・・・絶対、無理!)
何の準備もなく、大の苦手とする歴史が解ける訳ない。今日の学校での小テストは、たまたま昨日功平に教えて貰ったから出来ただけ・・・。どんな問題でも解けるって訳ではなく、ただ単に運が良かった、それだけなのに。
「10点中8点だよ、出来てるね!」
・・・・・・・・・あれ?
「・・・何で!?」
これまた昨日功平に教えて貰った所が主に出ていた。もしや、琇が私に合わせて作ってくれた?だとしたら解けて当然・・・
「ちゃんと理解出来てる証拠だよ。このテストの平均点は6点だから、自信持って良いよ」
平均点・・・ということは、他の人も受けているということ?いや待てよ?もしかしたら、私レベルの物を選んできてくれたのかも?
「とも、勘ぐり過ぎ(笑)」
「だ、だって・・・」
「本当にちゃんと出来てるんだよ?」
自分を褒めてあげよう、と言う彼は確実に褒め上手。さすが先生。
「よし、終わりにしようか」
そんな琇先生による歴史の学習は18時過ぎに終了。
「琇さん、ありがとう!楽しかった!」
「それは良かった。そう言って貰えるのが何より嬉しいよ。とももよく頑張ってたよ」
よしよし、と頭を撫でられた私はまさに生徒。頑張ったという気持ちが少しずつ湧き上がる。
「疲れたでしょ、ゆっくりしてって」
そんな琇は、俺はバイトだから、またね。と傍らの鞄を片手にあっという間に家を出て行った。